みすず「読書アンケート2023ーー152人の識者が選んだ、この一年の本」三昧③ 「この人のこんな本に対するこんなコメントが気になりましたの①

欣喜雀躍

こんな企画も、組めてしまうくらい、この「読書アンケート」は、面白い。一年間、飽きずにい付き合える気がする。で今日はその触りです。どのくらいのところまで書けるのかは分かりませんので、例によって手探りの第一歩です。

諫早庸一さん(グローバル・ヒストリー)のジェームス・C・スコット『反穀物の人類史ーー国家誕生のディプーヒストリー』に対するこんなコメント。(それにしても、この本も高い。\4,180、312p)

この本で見舞われるのは、農業は人間の健康、栄養、余暇における大きな前進だという通念に対する強烈なカウンターである。主要穀物に縛りつけられた農耕民の世界は、狩猟採集民の世界よりずっと貧しかった。〈飼い馴らされた〉のは穀物でも家畜でもなく、むしろ人間だったのだ。

いかがですか。かなりショッキングなコメント。更にアマゾンのこの本の紹介欄には、以下のようなコメントも並ぶ。少し長いが、紹介したい。

・世界観を真に変革する、稀な書だ。――A. サリヴァン(『ニューヨーク・マガジン』)
・われわれの農業に偏った歴史観は、見直しを迫られるだろう。――S. シャブロフスキー(『サイエンス』)
・人類が文明と政治的秩序のために支払った大きな代償を、ずばり明らかにしている。――W. シャイデル(『暴力と不平等の人類史』)
・「ある感覚が要求してくる――わたしたちが定住し、穀物を栽培し、家畜を育てながら、現在国家とよんでいる新奇な制度によって支配される「臣民」となった経緯を知るために、深層史(ディープ・ヒストリー)を探れ、と…」

読まずにはおれない感覚に陥ってしまうのは、私だけではないでしょう。国家が人民に寄与してくれないことが明らかとなった日本の現状や、お米農家の想いなどないがしろにされて米価だけが高騰していることや、縄文文化の優位性が語られ続けていることなどから、資本主義や民主主義の現代の文明の限界が露わになりつつある今、真の自由を享受し、真の生の充実を感得するためには、もはや「革命」しかない!のでしょうか。または、ジェームス・C・スコット『実践 日々のアナキズム――世界に抗う土着の秩序の作り方』の実践か。本当に、国家ということを考えさせられる今日この頃です。
それにしても、諫早氏の肩書、「グローバル・ヒストリー」とは何のことなのでしょう? また、書名にある「ディープヒストリー(深層史)」も? 
更に、「農業は人間の健康、栄養、余暇における大きな前進だという通念に対する強烈なカウンターである。」ということは、どういうことか? 特に「農業」「前進」させたと信じられている「栄養」についての通念に関しては、少し思うところがあるので書いてみたいと思います。(もちろん、健康や余暇も再考が要される大事なテーマではあると思います。)

といいますのも、この1月6日から13日まで、イギリスのオックスフォードで行われたオックスフォード・リアル・ファーミング・カンファレンス(ORFC)の内容を見ていたら、「生命を育む種、土、植物」というShumei主催のセッションで、招待されていた生態学者で作物の栄養学について研究されているマシュー・アダム氏が、「栄養素が高いからといって、それが作物の質が高いことにはつながらない」という調査結果を報告されていました。これには、私だけでなくて、その場にいた聴衆の皆さんも大変驚かれ、関心を持たれたようです。
「栄養素が高いからといって、それが作物の質が高いことにはつながらない」ということは、「栄養素」って何?「作物の質が高いこと」って何をもってそういえるの?ということになりませんか。まさか、作物の中の「霊気が濃い」ことが、作物の質の高さのことだとは言わないだろうとは思いますが、こうなると根底から「栄養」って何?ですよね。それに頼って営まれている、例えば給食って大丈夫?ということになりませんか。または、各種のサプリメント。

確かに、Shumeiの根本的な教えには、岡田茂吉師の次のような言葉を読むことができます。
「抑々今日一般に何の疑いもなく信ぜられ実行されつつある栄養学なるものは、全然誤謬以外の何ものでもない。この誤れる栄養学が有害無益の存在であるに拘らず、最も進歩せる文化の一面と信じ盛んに世に行われているのであるから、それに要する労力や費用の厖大なる事は、実に惜しみてもあまりあるというべきである。」(「栄養の喜劇」より抜粋)
そう、今日の「栄養学」は間違いで、有害無益。このお言葉が、先のマシュー・アダム氏の言葉と重なるのです。また、諫早氏の「農業は人間の健康、栄養、余暇における大きな前進だという通念に対する強烈なカウンターである。」との批評とも関連がありそうで。当の『反穀物の人類史ーー国家誕生のディプーヒストリー』を読んでないのですから、何とも心もとない見解ではあるのですが。(なにせ高い! またかよ!)

今日はこのくらいにしておきます。
このペースでいくと、今年一年、ずっと「みすず」で楽しめそうです。(ルンルン!)
次回も、ご期待くださいませ。
読んで頂き、ありがとうございました。

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